| 高精度偽造米ドル紙幣の鑑定方法とは 目次へ 偽造通貨対策研究所 所長遠藤智彦 ( 1996/11) 脅威の偽造米ドル券スーパーノート 近年、従来に例を見ないほどに精緻な出来映えの新手偽造米ドル券が出回っており、その量と質において国際的にも重大な社会問題となっている。当該新手偽造券はベテランの鑑定家や従来タイプのハイテク鑑別機でもその発見が困難とされている。 当該偽造券は「スーパーノート(またはスーパーK)」と称される旧100米ドル券の偽造で、現在では相当大量の枚数が真正券として世界中に流通していると見られている。 米財務省シークレットサービスによれば、咋年だけでも約4億ドル(枚数にして400万枚)のスーパーノートが押収されたとしているが、実際には氷山の一角であり、真正券として流通しているであろう実数は全く兄当がつかないほどである。 わが国におけるスーパーノートの発見量も年々増大の傾向にあり、平成6年以降国内で発見された偽造券米ドル券の過半数がスーパーノートとなっている(世界各国でも同様の現像がある)。スーパーノートの高精度ぶりは本年4月から5月にかけて各種新聞報道などで承知の向きも多いであろう。スーパーノートは1990年の偽造対策改訂券(時の米財務長官ブレディ氏が「新ドルの発行により、今後偽造券は衰退していくであろう」と語った、マイクロ文字の印刷とセキュリティスレッドの混抄が施された部分改訂券)の偽造が最新版といえるが、現在までにSERIES1977,81,85,88の100ドル券の偽造も発見されている。ちなみにスーパーノートやスーパーKと言った呼称はマスコミが偶発的に命名した?とも言え、ICPO(国際刑事機構)などのレファレンスでは特段の公的認知は見受けられない。スーパーKとは一連のスーパーノートの中でSERIES1990、1991、1993年の偽造券をさしている。米ドル券は私たちが海外旅行に出かける際に手にする、最もポピュラーな外貨だけに、ベテランによる目視やハイテク機器でも見破りにくいとされるこのスーパーノートに対し、何らかの対策を考慮せずにはいられない。 偽造米ドル券の鑑定 偽造米ドル券は「南北戦争以降、米ドルの歴史と同居してきた」と言われるほどその歴史も長く、また過去にさまざまなタイプの偽造券が出現している。偽造米ドル券の鑑定を職業的に考察するとスーパーノート出現以前と以降に大きくわけざるを得ない。従来の偽造米ドル券の鑑定では、主に紙質や印刷版式などを見ることで判定することができた。真正券米ドル券の特微である有色繊維(写真1用紙には赤・青の有色繊維が混抄されている)や各種の微細印刷(写真2マイクロ文字やカゴメ模様の微細な部分は凹版印刷でないと再現できない)などが鑑定の有力なポイントとなったからである。 しかしながらスーパーノートではすでにこれらの点はほぼ完全に模倣されており、紙質や印刷版式の特性などの観点からの鑑定はきわめてむずかしい。スーパーノートでは使用された用紙には真正券と同様の色と材質で有色紬維が混抄されており、また微細な部分の印刷もいわゆる彫刻凹版印刷により、正確に再現されているからだ。 このことは表現を換えれば、スーパーノートを製造する偽造団が真正券用紙と同様の紙を作ることができる製紙工場を有し、かつマイクロ文字などの微細印刷を施すことが可能な印刷機などの設備を有することが推測される。新聞報道によれば米捜査当局は偽造団がスイス・ジオリ社製の凹版輪転印刷機を保有していることを内偵したと報じている。 従米の偽造券では、触感鑑定法として鑑定家の指による感触で、凹版印刷によってできたインタグリオ痕跡(凹版印刷特有のインクの盛り上がり)から得られるざらつき感が判断の手がかりとなり、また混抄繊維については偽造券が印刷によってそれらしく再現してあったり、糸くずを貼ったものなどが一般的であった。従来の偽造券が、あくまで真正券と典なった製法で製造されているのに対し、スーパーノートでは真正券と同様の製法で長期に渡り大量に作られている点が大いなる違いであり、また脅成でもある。さらにスーパーノートに使用されているインクには真正券と同様の磁性物質が練肉合成され、印刷後のインクの光沢などから、用いられていると思われるアマニ油ワニスの熱重合などの印刷基礎技術までが相当高い完成度でみごとなまでに模倣されている。インクに磁性物質調合しておくと鑑定機や自動販売機も通過させることができるため、この様な偽造券ほどブラックマーケットでは高値がつくと言われている。 国家の影も見え隠れ、スーパーノート出現の背景 スーパーノートは犯罪史上最大規模で、かつ過去に例をみない秀逸な出来映えでの偽造券米ドル券ということができる。大量印刷にはさまざまな設備(インフラ)や部材(マテリアル)を調達整備する澗沢な資金が必要であり、さらにそれらを駆使する高度な技術力(テクノロジー)、さらには印刷原版を彫刻するマイストロと呼ばれる工芸職人の養成・印刷品質の維持改善(QC)などが要求される。 そして何より製造に従事する定地の人々が違法行為と知りながら継続していくことが可能とする ならば相当の水準で情報の統制と思想統一が必要であり、もはや偽造団とは’言え民閉でのスーパーノートの製造は考えられないとの見方が強く(米国に敵対する)によって確信的に正当化し製造されているとの推測がなりたつ。新聞報道ではスーパーノートの製造にイランや北朝鮮などの国が関与しているとの発表がなされているが、近年一部の国の暴力的支配者が偽造米ドル券によって核兵器を購入しようとしている実態が明らかになっている。 経済活動や安全保証などで連盟を作る自由圏に対し、独特の国家主義によって進もうとする国も多く、これらの国の中には核保打国となって威信を手に人れようと、すでに旧ソ連邦のカザフスタンから2発の核弾頭を購人した国があると言われている。同国の核兵器管理に関する公式記録でも「2発が紛失または行方不明とされている。 スーパーノートの鑑定方法 従来の偽造券が厚真製版(真券を撮影し、そこから原版を作る)によって製造されているため、デザイン上の差異が生ずることは考えにくい。しかしながらスーパーノートでは極めて精巧ながら、デザインにおいて真券と決定的に異なった部分が散見される。スーパーノートはその初期仕様が発見されてから今までに9種ほどのバージョンが発見されており、その完成度もますます真正券に近づいてきている。写真3左では金種マークを縁どる罫線が真券に比べ異常に寄りついており、また写真4右では肖像画線のリボン上の銘版が描かれた水平画線との接点などに差異を視認できる。(写真4も両線の差異)。従来の偽造券の鑑定では紙質や触感による印刷版式の差異をよりどころとしていたのに対し、スーパーノートでは紙質や印刷版式における真正券との差異はもはや視認できないため、これらのデザイン上の差異によって鑑定せざるを得ない。 スーパーノートは一定期間経過すると新手のバージョンが出現し、それが過去9阿も繰り返えされている。このことは品質に秀逸なる偽造券ゆえ印刷ミスの修正改善に努力を傾注していると見る向きが一般的である。しかしながら筆者としては、単なる印刷ミスの修正ではなく、意図的に真券と微妙に異なったデザイン(特微)の偽造券を何種類も製造することで、鑑定家の目をまどわし偽造券の流通力を維持延命させつつ、また偽造団の品質(流通)管理上の象徴符号として利用しているとの見方を強めている。 スーパーノートの鑑定へ |